低尿酸血症を知りたい方へ

低尿酸血症の原因と対策

尿酸ってなに?

お酒をよく飲む人なら尿酸という言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。聞いたことはあっても、『それは何だろう? 尿にかかわるもの?』と実態が良くわからない方も多いと思います。当サイトでは、尿酸がどのようにして生まれるのか、私たちの体にどのような影響を及ぼすのかをお伝えします。

尿酸とは、プリン体という物質が体の中で分解されてできる代謝物です。

私たちの体は生命を維持するために手足の筋肉だけではなく、心臓や肝臓、脳にいたるまで全身くまなく動かしています。このときのエネルギー源としてプリン体が利用されており、このエネルギーが使われた後の最終的な代謝物が尿酸です。

また、プリン体は細胞の中にあるDNAを構成する成分でもあります。私たちの体は常に細胞が作り替えられており、古くなった細胞はどんどん壊されていきます。このときにもプリン体も壊され、同じように老廃物として尿酸ができます。私たちの体は約37兆個の細胞でできていると言われており、その一つひとつにDNAが含まれているので、健康な人であれば毎日一定量の尿酸が作られています。

プリン体は私たちの体の中でも作られるほか、食事からも摂取しています。食べ物から取り込まれるプリン体が全体の2割で、体の中で作られるプリン体が8割です。

プリン体から尿酸が作られる3つのきっかけ

私たちの体の中にあるプリン体や、食事から摂取されプリン体はいくつかの方法により尿酸にまで分解されます。

1 新陳代謝から尿酸が作られる

私たち人間をはじめとした動物、昆虫、植物など、生きているものは全て細胞でできています。細胞にはそれぞれの遺伝子の情報を伝える核酸(DNA)があり、この核酸を構成するのもプリン体です。生きていると、常に新しい細胞が生まれ、古い細胞が死んで新陳代謝が行われています。役目を果たした古い細胞が消滅するとき、核酸が分解されてプリン体になります。プリン体はさらにいくつかの工程を経て分解され、最後に尿酸になります。

2 運動をすると尿酸が作られる

体を動かすと体の中ではエネルギー源としてATP (アデノシン三リン酸)という物質が使われます。ATPは多くの場合、体を動かすエネルギーにするために分解されそのあとは元通りATPに戻ります。しかし、急にたくさんのATPが使用されると元通りにならず、プリン体になりさらに尿酸へと分解されます。激しい運動をするとATPが大量に消費されるため、尿酸値が一時的に上がりやすくなります。

暴飲暴食でも消化に多くのエネルギーを使うため、尿酸値が上がりやすくなります。特にアルコールの分解の際には多くの尿酸がつくられると同時に腎臓からの尿酸の排泄を低下させます。特にビールが尿酸を上げると言われているのは、アルコールの作用以外に、ビールにプリン体がたくさん含まれているからです。

3 食べ物に含まれるプリン体から尿酸が作られる

プリン体を多く含む食事をした場合も、摂取した食べ物から得たプリン体が体の中で尿酸にかわります。プリン体の量は細胞の数に比例するため、細胞の数が多い食べ物にたくさん含まれています。プリン体が多く含まれる食べ物として、魚卵やレバー、一部の魚介類(エビやカツオなど)、干物、干しシイタケが知られています。

尿酸は体内でバランスを取っている

こうして体内で生まれたプリン体は肝臓で分解され尿酸になり、尿や便と一緒に体外に排泄されます。通常、健康な人では尿酸値が基準範囲内におさまるように腎臓や小腸が尿酸の排泄量のバランスをとっているため、体の中の尿酸の量は一定となっています。

健康診断の結果などでは多くの場合、施設によっても異なりますが血清尿酸値の基準値として男性で3.7~7.8mg/dL、女性で2.6~5.5mg/dL(※1)と記載されています。

尿酸は体に必要なもの?

尿酸は血液中や体液に溶けていますが、多くなりすぎると溶けきれず結晶になってしまいます。関節で、尿酸が結晶になって溜まり、炎症を起こすのが痛風です。「尿酸=痛風」といったイメージがあるので、尿酸は私たちの体にとって不必要なものと考えている方も多いと思いますが、実は尿酸は私たちの体を守ってくれるものでもあります。尿酸は抗酸化作用(※2)を持ち、体内で増え過ぎた活性酸素を消去する役割を果たします。尿酸が少なすぎても、それ自体が病気の原因になることはなく自覚症状もありませんが、尿酸が少ないことによって起こりやすい合併症があるため注意が必要です。

(※1)日本臨床検査医学会、日本臨床化学会、日本臨床衛生検査技師会、日本検査血液学会が定める共用基準範囲
(※2)人間の体を酸化させ劣化させてしまう活性酸素を抑え込み、体内を酸化から守るはたらき

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